− 東寺伝法学院 第十三期生 入学式祝辞 −
平成23年4月7日 東寺真言宗々議会 議長 松下隆洪


 本日の慶事を祝し、宗議会を代表し一言お祝いを申し上げます。

 まずもって新入生の諸君、ならびにご父兄には、ご入学おめでとうございます。特に新入生諸君の本学院入学に至るまでの逡巡を思います時、諸君は人生のいくつもの道をたどり、ようやくいま、仏門を通して人生の真価を尋ねる、その入り口にたどり着いたといえます。

 新入生の皆さんはまだ若いので、そのような体験はおもちではないと思いますが、人生には生涯に一度や二度、必ず命に関わるよな危機に遭遇することがあります。日本と日本人は、今がその時といえましょう。福島原発の状況は、予断を許しません。春の京都から眺めれば、東日本で今進行していることは、対岸の火事に見えるでしょうが、原子力災害では、島国日本に安全地帯などありません。万一の時には、一週間で放射能は日本列島を巡るでしょう。福島の危機は京都の危機でもあるのです。

 有史以来の大地震と、原発災害という、これも有史以来の大事故により、日本人は3月11日、それまでとは別の文明期に入ったと考慮されます。このような劇的時代に、諸君は出家得度されるわけです。その意義はどこにあるのか、重々考えるべきです。何かの運命の巡り合わせが、このような時代に、君達を仏門へ送ったのだから、そこには必ず何か哲学的な意味があり、諸君一人一人に、何かの使命が待っているのではないかと思うのです。

 その意味を諸君が、この一年、東寺の修行の中で見つけてくれたら、宗門の喜びはたとえようもありません。どうかそのようなお気持ちで精進して下さい。

 本日はおめでとうございます。